東良信講師

講演会(演題:国際事情—東欧の情勢)

[日時]令和6年9月30日
[講師]東 良信(ひがし よしのぶ)氏
[場所]長崎県東京産業支援センター1階会議室

令和6年9月30日(月)、18時00分より県人クラブ1階で秋の講演会を開催しました。

 講師の東良信氏は、1974年、総理府に入府され、内閣府審議官を務められた後、2008年に特命全権大使としてルーマニアに赴任されました。国際情勢の分析に関わってこられた立場から、現在の国際情勢をどのように見るか、また、マスコミではなかなか報道されない東欧について、歴史、文化、民族性について広く語っていただきました。
 現在、城西大学総務局長かつ非常勤講師。長崎大学経済学部でも講義されています。
 長崎南高出身、東京諫早会副会長として郷里の発展にも努められています。

参加者は25名でした。

今泉理事長
▲今泉理事長のご挨拶。本日は第95回県人クラブ講演会です。今日は、ルーマニアや世界中の人が注目しているロシアの話も聞けると思います。
古川文化事業部長
▲古川文化事業部長より、講師のご紹介。東良信様は、元内閣府審議官でルーマニア大使も務められました。城西大学の総務局長で諫早会の副会長でもあります。
東良信講師
▲講師の東良信氏。長崎は原爆をメインに動いている部分があるので、原爆の扱い方、世の中の人、東欧の人はどうみているのか客観的に見てみるのはいいかなと思い、お話してみようと思います。

<レジュメ>
国際事情 ――― 東欧の情勢
1.はじめに
  ① 現下の国際情勢
    ・グローバル化
    ・アジア・アメリカ・ヨーロッパ
    ・現在は国際社会の分岐点か
  ② 国際情勢を見る視点
    国際情勢を動かす手段・・・軍事活動と資金の流れ
        軍事活動・・・熱い戦争
        資金の流れ・・・冷たい戦争(科学技術、IT技術、金融、資源)
2.東欧とは
  ・狭義の東欧
  ・東西冷戦時代の東欧
  ・中央、南欧の歴史、文化
3.東欧革命
   1989年6月ポーランド、10月ハンガリーの非共産国家の誕生
   1989年11月ベルリンの壁崩壊
   ルーマニア、チェコスロバキア(ビロード革命)
   1991年バルト3国の離脱
4.その他
   ウクライナとロシア


聴衆
▲国際情勢の解説に耳を傾ける聴衆

<印象に残った話題から>
★国際情勢、今はグローバリズムで世界が一つになっていて、官邸廻りの外政を扱っている人たちには共通認識があります。
中国は今、経済がダウンしています。日本も30年前に米国との半導体戦争を経験しましたが、今、米中で半導体摩擦が激しくなっています。一方、アジアの情勢はインド、インドネシアが台頭してきています。アメリカは自前の開発技術があるが、移民が増えて、中産階級がなくなっているという社会状況があります。
ヨーロッパの経済は落ちてきていますが、基本的に民主主義を守りたい、EU、NATOで共同して守りたいと思っています。
今は、第三次世界大戦に進むのか、グループで平和的な解決の道を図るのか、その岐路にあるといえます。

★ヒットラーのような独裁体制が出てくるのは、国が疲弊している時です。ソビエトが崩壊し、外国からいろいろなものが流入した結果、国民は貧しく経済が疲弊していました。プーチンはそのような時期に出てきて、安定した生活が可能になったという事情があります。

★狭い意味での東欧は、ロシア、ウクライナ、ベラルーシの3国です。
ソビエト連邦として入った国、ワルシャワ条約機構で入った国、ユーゴスラビアのように同盟国として東側についた国があります。
中欧、南欧はトルコの支配下、ポーランド、チェコスロバキアはドイツの支配下でした。 クリミア戦争はトルコ、ロシアの戦いです。

★ブルガリアは面白い家族形態です。1家族に100人、150人がいます。男の子が生まれると全部その家族、出て行かなくて、結婚すると家族が増えていきます。

★東欧革命の中で、内戦で5%の人口を失ったボスニア・ ヘルツェゴビナの現在は国際社会の監督機関の監視下にあります。イスラム系、クロアチア系、ブルガリア系と3民族で8か月ごと、持ち回りで統治を行っています。

★東欧諸国で国内問題が起きても、ペレストロイカ時はソビエトが軍事で助けられなくなり、崩壊せざるを得ませんでした。東欧革命でルーマニアの場合はチャウシェスクの一党独裁であったため、国民の反対にあって処刑されました。ところが、現在、チャウシェスク時代を懐かしむ人もかなり多くいます。チェコの場合は、連邦制をとっていて、各国が独立、ビロード革命と言われるソフトな移行をしました。

★東欧は、長い間ロシアに支配されていたので、唯一、ロシアに戦争で勝った歴史を持っている日本に好意を持っています。ルーマニアに赴任するとき、披露できる日本文化を持っている方がいいと勧められ、書道をやりました。また、高校の授業で行っていた柔道も役に立ちました。

<質問と回答>
●ウクライナとNATOについての見通しは?
基本的には第2次大戦後の取り決めに従っていきたいのですが、3州は独立して国連に任せる、他はウクライナの統治とする形しかないと言えるかもしれません。周辺国の説得が問題で、あと1年位で収束するのではないかとみています。

●ウクライナの平均寿命は?
短いです。どこの世界でも同じですが、危険なことをあまりやらない女性の方が長生きです。

●ルーマニアの産業は?
農業国です。ぶどうの生産が盛んで、イタリア産のワインになっています。平地が多く、非常にいいところで、工業化も進んでいますし、石油も採れます。日本たばこ産業が投資していてタバコ生産が盛んです。東欧への出荷のすべてを請け負っています。
電動工具のマキタもルーマニアに工場を持っていて、ヨーロッパを市場にしています。また工業高校を作っていて、優秀な学生を集めています。フランスやイギリスに進出しにくい企業は東ヨーロッパに進出する傾向があります。

懇親会
▲講演会終了後は、「まうまう」に移動して懇親会をおこないました。

(撮影:井上早苗)